
ところでビットコインって誰が何のために作ったの?
仮想通貨に興味を持ち始めた方なら、一度はこんな疑問を持ったことがあるはずです。
インターネット上で取引されるデジタル通貨、ビットコイン。その誕生にはある一人の人物(あるいは組織)が深く関わっているとされています。
その名前は——サトシ・ナカモト。
この記事では、ビットコインを作った人物「サトシ・ナカモト」の正体と、ビットコインが作られた目的についてまとめています。
ビットコインはなぜ作られたのか?
ビットコインは単なる新しい通貨ではありません。そこには明確な「目的」がありました。
誰にもコントロールされない通貨を作るため
サトシナカモトが掲げたビットコインの目的は、「誰にもコントロールされない通貨」を作ることです。そのきっかけとなったのは、「中央集権的な金融システムへの不信感」でした。
従来の通貨は、中央銀行や政府によって管理され、発行されています。
これは一見すると安定的に見えるかもしれませんが、裏を返せば、国の方針一つでインフレや通貨の価値が大きく揺れる可能性があるということです。

例えば、2025年4月はトランプ大統領の大規模な関税政策によって、米ドルの価格が大きく下落しています。
ビットコインはそれに対抗する形で、「誰にも管理されない通貨」として誕生しました。

国や銀行に頼らず、誰でも自由に使えて、検閲も改ざんもされない通貨。それがサトシの掲げたビットコインのビジョンです。
現在の金融システムへの問題提起をするため
サトシナカモトは、ビットコインを発行することで、現在の金融システムへの問題提起をしたと言われています。
2008年、アメリカを中心にリーマンショックが起きました。これにより多くの銀行が倒産し、世界中の経済が混乱しました。
この出来事をきっかけに、金融システムへの不信感が一気に広がります。世界の金融機関が抱えるリスクと脆さが浮き彫りになりました。
多くの銀行が破綻し、政府が税金で巨額の救済を行うという事態に、人々の不信感は爆発したのです。
サトシは、なんとこのタイミングでビットコインの構想を発表しています。

ビットコインの最初のブロックには、「銀行の2度目の救済が迫る」との新聞記事の引用が刻まれていたことからも、現在の金融への強い問題意識がわかりますね。
世界中の誰もが平等に使える通貨の実現のため
ビットコインは発展途上国や金融インフラが整っていない地域でも使える「世界共通のお金」を目指しており、以下のような理念が込められています。
- 国境に関係なく送金できる
- 誰にも止められない
- システムが自動で管理される(ブロックチェーン技術)
ビットコインは、インターネットさえあれば世界中のどこにいても使える通貨です。銀行口座を持てない人でも、スマートフォンがあれば送金・受け取り・保管ができます。
また、中央政府が通貨を規制したり凍結したりすることもできないため、政治的な弾圧や経済制裁に苦しむ人々にとっての“経済的な自由”を守る手段にもなります。
このように、ビットコインは誰もが平等に使える通貨となれる仕組みが整っており、「通貨のグローバル化」や「経済格差の是正」といった社会的な問題に対する解決策としても期待されています。
サトシ・ナカモトとはどんな人物?

ビットコインの生みの親「サトシ・ナカモト」とは匿名の人物です。この名前は広く知られているものの、実際にその人物の顔を見た人はいません。
名前だけが知られている人物
「サトシ・ナカモト」という名前は日本人のように見えますが、その人物が日本人である確証はありません。むしろ、英語で活動していたことや時差のパターンから、欧米在住の可能性も指摘されています。
彼(もしくは彼ら)は、インターネット上のメールやフォーラム投稿を通じて、ビットコインのアイデアを世に広めました。
ホワイトペーパーの公開と開発スタート

2008年10月31日、サトシは暗号学のメーリングリストに「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」というホワイトペーパー(論文)を投稿しました。
ここで、ビットコインの基本的な仕組みが初めて公開されたのです。
この論文には、第三者の仲介なしで安全に送金できる仕組み(ブロックチェーン)が詳しく記されています。
翌2009年には、実際のソフトウェアが公開され、ビットコインの運用が始まりました。
ネット上から姿を消している
2010年を最後に、サトシ・ナカモトはネット上から姿を消しました。メッセージの投稿も止まり、以降、音沙汰は一切ありません。
この理由については様々な憶測がありますが、もっとも有力なのは「プロジェクトを自立させたかったから」という説です。ビットコインが個人ではなく、みんなのものとして発展することを望んでいたと考えられます。
また、法的リスクや政治的圧力を避けるためだったという見方もあります。
動かされない“伝説のウォレット”
サトシ・ナカモトは、100万BTC以上をマイニングして保有していると推定されています。しかし、これらのビットコインは一度も移動された形跡がありません。
例えば、以下はサトシナカモトの初期のアドレスです。

このアドレスは今や「記念碑的存在」となっており、誰かが少額を記念送金していたりします。
もしサトシがその気になれば、数兆円もの資産を手にすることができるにもかかわらず、手を付けていません。その沈黙が、サトシの理念の純粋さを物語っているとも言えるでしょう。
ビットコイン誕生の流れ
ジェネシスブロックの作成
2009年1月3日、サトシは「ジェネシスブロック」と呼ばれる最初のビットコインのブロックを生成しました。ここには、ある有名なメッセージが刻まれています:
“The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks”
これは、イギリスの新聞記事の見出しで、銀行救済が迫っているというニュースです。この一文は、ビットコインが既存の金融システムへのアンチテーゼとして誕生したことを象徴しています。
最初のビットコイン取引
その後、サトシは暗号学者のハル・フィニーに10BTCを送金しました。これが世界で最初のビットコイン取引です。
サトシ・ナカモトの正体とは?
ビットコインが有名になるにつれ、「サトシ・ナカモトって誰?」という議論が盛り上がりました。以下は有力な候補です。
ハル・フィニー説
📖ビットコイン人物図鑑📖
— 山下健一|Bitcoinを愛するWeb3教育者 (@Kenichi_Y) February 18, 2024
ハル・フィニーはビットコインの初期の貢献者であり、最初のビットコイン取引の受取人としても知られています。… pic.twitter.com/LpVt9kfEQ8
氏名 | ハル・フィニー(Hal Finney) |
生年月日 | 1956年5月4日 |
逝去 | 2014年8月28日(享年58) |
出身地 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州 |
職業 | プログラマー、暗号学者 |
所属・経歴 | PGP Corporation(Pretty Good Privacyの開発メンバー) |
主な業績 | ビットコインの最初期ユーザー/サトシから最初のBTC送金を受けた人物 |
関連分野 | サイファーパンク、暗号通貨、デジタルプライバシー |
病歴 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、晩年は寝たきり |
その他 | 死後、遺体はアルコー社によって冷凍保存(未来技術への希望) |
初期のビットコイン開発に関わり、サトシから最初の取引を受けた人物です。
亡くなる直前までビットコインの開発を支援していたこともあり、フィニーがサトシ本人ではないかと考えている人も多くいますが、フィニー本人は、「私はサトシではない」と明言しています。
ただし、「サトシとやりとりしていた」とも証言しているため、近しい協力者であった可能性は高いです。
ドリアン・ナカモト説
以前、ビットコイナー反省会さん
— PX🥹 (@PX97719953) October 26, 2019
にてアップされました.. 見られた方もおられると思いますが
ドリアンナカモトさんの
(本物!?サトシナカモト)
貴重なロングインタビューを貼っときます
ビットコインを楽しんでください♥️で締め括られるとってもフランクな素敵な方ですhttps://t.co/d30vSD4kPz pic.twitter.com/8nnBgby01I
2014年、Newsweek誌が「サトシ本人」として報じたが、本人は強く否定しました。メディアによる早とちりとされました。
金子勇説
【エンジニアの心に響く名言🗯】
— 【UPP ROOM -アップルーム-】 ITフリーランスエンジニア専属エージェント (@dokuritsu_techa) March 10, 2025
~私にとってプログラミングとは、「こんなふうに考えたよ」という表現であり、そのための手法です。プログラミング以外の方法でしゃべるすべを知らないのです~
金子勇(プログラマー)#エンジニア#名言#駆け出しエンジニアと繋がりたい pic.twitter.com/W7Nirl7u4W
氏名 | 金子 勇(かねこ いさむ) |
生年月日 | 1970年3月6日 |
逝去 | 2013年7月6日(享年43) |
出身地 | 北海道 |
職業 | プログラマー、元・東京大学大学院助手 |
主な業績 | ファイル共有ソフト「Winny」の開発 |
逮捕年月 | 2004年(著作権法違反幇助容疑) |
裁判結果 | 2011年 無罪確定(大阪高裁→最高裁) |
金子勇(かねこ いさむ)さんは、日本のプログラマーで、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者として知られています。
金子氏は、P2P技術の可能性を追求しており、彼の開発したWinnyは、技術的に先進的で、のちのブロックチェーン技術とも通じる部分がありました。
現在でもサトシナカモトは金子氏だと信じる声が根強く、その理由は以下の通りです。
技術的スキルの高さが共通
→ 金子勇はWinnyというP2P分散型ネットワークを個人で開発したほどの天才的プログラマー。
→ ビットコインもP2P技術を核にしたシステムであり、両者の技術的共通点が指摘される。
「匿名性」を重視する思想の一致
→ Winnyもビットコインも、匿名性と分散性を重視。
→ 中央集権に依存しない「自由なネットワーク」を志向していた。
時期の重なり
→ 金子氏は2002年にWinnyを公開し、その後逮捕(2004年)。
→ ビットコインのホワイトペーパーは2008年に登場。
→ Winny事件後に姿を消し、次に「Satoshi Nakamoto」という匿名が現れたことに注目する人も。
技術者としての沈黙
→ 金子氏は裁判以降、公に大きなプロジェクトは発表していない。
→ サトシも2010年を最後にネット上から姿を消した。
日本人である可能性
→ サトシ・ナカモトという名前は日本風であり、金子氏も日本人である点が一致。
Winny事件で「技術者が罰せられる社会」にショックを受けた可能性
→ 金子氏が日本社会で技術者が弾圧されることに絶望し、匿名で「真に自由な経済システム」を構築しようとしたという推測。
言語や文体の推測
→ サトシの英語はやや不自然で、日本人が書いた可能性があるとの指摘も(ただし異論もあり)。
ニック・サボ説
ニック・サボ氏は、暗号学だけでなく、法制度や経済学にも深い知識を持つ人物です。ビットコイン誕生以前から、「bit gold」という、ビットコインと非常に似た非中央集権型デジタル通貨の構想を提唱しており、そのアイデアはビットコインの原型とも言える内容でした。
また、ビットコインのホワイトペーパーと、サボ氏が過去に執筆した文書の文体が非常に似ているという言語分析の結果も報告されており、「彼こそがサトシ・ナカモトなのでは?」という声が根強く存在します。
しかしながら、サボ氏本人はこれらの憶測に対して一貫して「自分はサトシではない」と否定しており、明確な証拠もないまま現在に至っています。
アダム・バック説
アダム・バック氏は、ビットコインにも組み込まれているProof of Workの概念に基づい「Hashcash」の開発者として知られています。
暗号学の分野で高い評価を受けており、ビットコインのホワイトペーパーの中でも彼の技術は引用されています。
さらに、サトシ・ナカモトが初期にメールでコンタクトを取っていた数少ない人物の一人でもあり、その技術力と経歴から「サトシ本人か、もしくは非常に近しい人物ではないか」と見る向きもあります。
ただし、バック氏本人は「自分はサトシ・ナカモトではない」と繰り返し明言しており、現在のところ決定的な証拠はありません。
まとめ:正体よりも大事な「理念」
サトシ・ナカモトの正体は未だに謎に包まれています。けれども、その人物が「何のためにビットコインを作ったのか」という点には明確な答えがあります。
それは、「誰かに支配されない自由なお金」を作ること。そして、国や銀行に依存しない、新しい経済の可能性を切り開くことでした。
ビットコインは、ただの通貨ではなく、“思想の結晶”とも言える存在です。その根底にある理念は、今なお多くの人々を惹きつけ、進化し続けています。
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